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わかば経営会計メールマガジンVol56  令和4年税制改正大綱

2021.12.17Vol.056

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わかば経営会計メールマガジン Vol 56   令和4年税制改正大綱
2021年12月17日 金曜日
【目次】
1.税制・経営コラム ~令和4年税制改正大綱(法人税・消費税編)~
2.税制・経営コラム ~電子帳簿保存法改正に関する宥恕措置~ 
3.実務図書紹介 ~いまこそ知りたいDX戦略~

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皆様、いかがお過ごしでしょうか。

12月も中旬となり、本格的に寒くなってまいりました。
年末は年内に終わらせるべき仕事に追われがちですが、
体調に気を付けて取り組みたいと思います。

◇ 経営コラム ~令和4年税制改正大綱(法人税・消費税編)~ ◇

12月10日に令和4年の税制大綱が発表されました。
法人税に関しては、賃上げ税制のほか、5G促進や地方拠点強化、
環境への配慮(いわゆるSDGsに対応するもの)を促進するものが目立ちますが、
大きな影響を受けるのは大企業が中心となりそうです。
また、一時期話題となりました、相続・贈与課税の一体化や、金融所得課税の見直しについては、
改正が見送られています。

今回は、法人税・消費税について、中小企業向けのものを中心に説明し、
次回は個人所得税・資産課税に関して説明させていただきます。
住宅ローン控除や住宅取得資金の贈与税非課税枠についても改正がございますが、
所得税の範囲ですので、次回説明させていただきます。

<法人課税に影響する論点>
・中小企業における所得拡大促進税制 (税額控除)
中小法人が、申告年度の給与総額について、前年の雇用者の給与支払額に比較して1.5%以上
支払額を増加させた場合、増加分の15%が税額控除される制度がありますが、
2.5%以上増加させた場合は、30%の税額控除と控除率が増加します。
また教育訓練費が前年比10%以上となった場合は、税額控除が10%加算されます。

・オープンイノベーション促進税制の見直し及び延長
事業会社から一定のスタートアップ企業に対する出資について、
投資額の25%が取得時に損金算入できる制度です。
株式の取得日から5年以内に出資した株式を売却した場合には、対応する部分が益金に算入されます。

今回の改正により、5年以内を3年以内と短縮する一方で、
スタートアップ企業の要件については、厳しくなります。
改正前は、設立以後10年未満であることのみが要件となっていましたが、
改正後は売上高にしめる研究開発費の割合が10%以上であることが加わっており、
研究開発投資を行うスタートアップに限定されることとなりました。

・少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例等の見直し
少額減価償却資産については、10万円未満であれば損金算入が可能であり、
中小法人の場合には、30万円未満であれば1事業年度あたり300万円を限度として、
損金算入できる制度があります。
今回、貸付けの用に供する目的で取得した場合については、対象外となりました。

法人課税の観点からは、賃上げ税制の拡大が目立ちましたが、
全体として大きな改正はありませんでした。

<消費税に影響する論点>
・適格請求書等保存方式にかかる見直し

この改正は、インボイス制度に関連するものです。
インボイス制度が開始されると、消費税の仕入税額控除の要件に
適格請求書の保存が入りますので、
適格請求書がなければ仕入税額控除が取れなくなります。(経過措置があります。)

適格請求書発行のためには、事前に税務署長に申請して適格請求書発行事業者として
登録する必要があり、令和3年10月1日から登録受付が開始されています。

今回の改正では、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの
日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、
その登録日から発行事業者になれるような措置が取られます。

インボイス制度は令和5年10月より開始予定であり、
改正の影響を受ける事業者はまだいないと思われますので、
時期が来ましたら、再度周知致します。


◇ 税制・経営コラム ~電子帳簿保存法改正に関する宥恕措置~ ◇

2か月ほど前に、本メルマガでも紹介し、中小企業でも大きな影響を受けると思われる
電子帳簿保存法の改正ですが、2年間の宥恕(ゆうじょ)措置が設けられることになりました。

令和3年度電帳法改正では、2022(令和4)年1月1日以後は、
電子データで授受した請求書や領収書等について、書面出力による保存方法は認められず、
検索要件等を充足したうえで、電子的に保存することが求められていました。

しかし、要件を満たすためのシステム導入や社内体制の構築が
間に合わないという声が上がっていたことをうけ、従前と同様に、
電子データを紙に出力して保存することを容認する旨の宥恕措置が設けられることとなりました。

具体的には、「やむを得ない事情」があると認められ(事前の届出等は不要)、かつ、
税務調査時に電子取引データを書面により提示又は提出することができる場合には、
2023(令和5)年12月31日までは、紙出力による保存が可能となります。

2年間の間に、訂正防止措置機能のある保存システムを導入するか、
検索可能な形で電子データを保存することが求められます。

◇ ~実務図書紹介 ~いまこそ知りたいDX戦略~ ◇

https://www.flierinc.com/summary/2656
(石角友愛 著、 2021年4月)

この本の著者は、アメリカのグーグル本社でAI関連プロジェクトを経験したのち、
現在は独立して日本企業中心にDX支援の分野で活躍されている方です。

本で紹介されている事例は大企業が中心ですが、
中小企業でも参考になるものが多いと考えましたので、今回紹介させていただきます。

DXはデジタルトランスフォーメーションのことですが、
これは単なる事務のIT化やRPAを指すのではありません。

会社の文化・DNAレベルでデジタル化が浸透し、
デジタルインフラ、組織、社員のITリテラシーなど全ての分野で
デジタル化を進めた状態と言われています。

このような状態になった企業は、指数関数的に成長を遂げ、利益を出すことが
できるといいます。そのために必要なプロセスとして、本書では3つのステップ
(デジタイゼーション、デジタライゼーション、DX)が紹介されています。

・デジタイゼーション
デジタイゼーションはいわゆる会社の業務プロセスの自動化・省人化です。
属人的となっている業務プロセスを見直し、簡素化、マニュアル化したうえで、
それに見合うシステムを導入することです。

システム導入は、自作しても既製品を導入しても問題ないですが、
会社の「コア」となる業務については、既製品では難しいと考えられます。
コア業務はその会社の競争優位性の源泉となっている場合も多く、
そこに既製品を当てはめてしまうと、競争優位性が失われる可能性があります。
また、既製品ではシステムの拡張が難しく、後のプロセス(デジタライゼーション・DX)
を実行することが困難になってしまうことも考えられます。

・デジタライゼーション
デジタライゼーションは、デジタイゼーションがほぼ完了した後で、
部署ごと、事業部ごと、全社において、デジタル技術を用いたビジネスモデル開発、
商品開発がスタートする状態を指します。

例えば、データはあるが、個人のローカルフォルダにのみ存在している状態から、
全員で共有できる状態にするプロセスが該当します。
中小企業の場合でも、社内サーバはあるものの、個人フォルダを作って
他の人が見た場合には全くわからない場合も少なくないと思います。
セキュリティ対策は当然必要ですが、社員全員が必要なときに、
必要な情報にアクセスできる体制を構築することで、部門・事業部を超えた、
全社レベルでのデータやアイデアを共有することがこの段階となります。

洋菓子メーカー「不二家」は、自社工場の在庫問題(製造が多すぎると
廃棄ロスが生じ、少なすぎると売り切れで販売機会を逃す問題)を解消するために、
日々の製品種類ごとの販売予測から、最適な製造量を計算するシステムを導入しました。
これにより廃棄ロスを削減し、長年赤字で合った洋菓子部門(店舗でケーキ等を販売する形態)を
黒字転換することに成功したといいます。

製造部と販売部(店舗)のデータをタイムリーに連携させなければ、
このようなプロジェクトは実行が難しく、全社レベルでITインフラを整えるところからの
スタートだったそうです。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)
ここまで長くなりましたが、DXは上記2つのプロセスを終えた後の段階です。
DXはデータの共有といった技術的な問題ではなく、社員のITリテラシーや
デジタルを利用してコア業務を変革していこうというマインドセットを持つという部分になります。

この段階になると、経営陣による「コア」事業の再定義が重要で、
「コア」の定義とコアの実現のためのデジタル化がDXということになります。

例えば、新型コロナワクチンで一躍有名となったアメリカの製薬会社「モデルナ」は
自社を製薬会社ではなく「生物学に携わるITカンパニー」と位置付けています。
このようにすることで、製薬に必要な実験・治験データだけでなく、
一見関係ないような生物学的データまでもがクラウドにおいて共有され、
スピーディーな開発が可能になったといいます。

このようにDXはIT投資だけではなく、組織、社員教育を含めた投資が必要になるため、
一朝一夕にできるものではなく、経営者が方向性を示し、必要な人材を集めて
計画を立て、継続的に実施することが必要となります。


文責:わかば経営会計 渡邊大真(大阪事務所)

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