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わかば経営会計メールマガジンVol67  期限延長発表!事業承継税制!

2024.01.09Vol.067

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わかば経営会計メールマガジン Vol 67   法人版事業承継税制
2024年1月9日 火曜日
【目次】税制・経営コラム ~法人版事業承継税制~
1. 制度の概要
1-1.事業承継税制とは
1-2.事業承継税制の種類
1-3.事業承継税制のメリット・デメリット
2. 贈与承継における事業承継税制(特例措置)の適用方法
2-1.大まかな適用手順
2-2.各手続きの詳細
3. 制度活用にあたっての主な留意点
4. 終わりに
5. 参考資料(適用要件について)

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◇ 1.法人版事業承継税制 ◇
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は当メルマガをご愛読いただき、誠にありがとうございました。
本年も様々な情報を発信してまいりますので、
引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします!

さて今回は、
令和6年度税制改正大綱で適用手続きの期限の延長が発表された、
法人版事業承継税制(特例措置)について、
制度の内容~適用が多いと想定されるケース
(贈与によって承継を行った場合の特例措置)の
手続き手順などを説明したいと思います。
事業承継税制は手続きが複雑で難解な制度となっていますが、
今回のナンバーを読めば制度の概略を知ることができますので、
ぜひご一読ください。

1.制度の概要
1-1.事業承継税制とは
事業承継税制とは、事業承継のために後継者が
取得した自社株式にかかる贈与税・相続税について、
納税の猶予を受けられる制度です。
さらにその後、一定の要件を満たすと、猶予された税額が免除されます。

中小企業の多くは、経営者が株主を兼ねているケースが多いです。
そのため経営者を引退する際には、経営権+自社株式を
後継者に引き継ぐこととなります。

この時経営が好調だと、自社株式の評価額が想像以上に高額となり、
多額の贈与税・相続税の負担が生じます。
この多額の税金という、予想外の支出で経営が圧迫されること、
また親族内で承継する場合には、多額の税負担をさせることになり、
心理面からも円滑に事業承継することが難しくなることが考えられます。
これらの問題を解決するため、平成21年度の税制改正で
「事業承継税制」が創設されました。


1-2.事業承継税制の種類
〔一般措置と特例措置〕
事業承継税制は「一般措置」と「特例措置」の2パターンの適用措置があり、
一部適用要件や手続きが異なりますが、適用を受けようとする方が
いずれかを任意選択できます。

特例措置は平成30年度税制改正により、
10年間の時限措置として創設されました。
それまで一般措置適用にあたってのボトルネックと言われていた
納税猶予の対象となる非上場株式等の制限の撤廃や、
制度適用後に留意しなければならない取消要件の緩和、
加えて納税猶予割合の引上げなど、一般措置と比較し、
適用者にとって有利な制度内容となっており、
期限が有効な内は「特例措置」の適用を目指すケースが多いです。


〔贈与と相続〕
前段で事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の
2つの適用措置があることをお伝えしましたが、
“どのように承継するか”によって、さらに2種類に分けられます。
この2種類とは「贈与で承継する場合」と「相続で承継する場合」であり、
結果として事業承継税制は下記の4パターンに分けられます。
なお、前項の通り特例措置の施行期間中はあえて一般措置を
選択するメリットはないため、実質的には②又は④の何れかの適用を目指すことになります。
① “贈与”で承継を行い“一般措置”を適用
② “贈与”で承継を行い“特例措置”を適用
③ “相続”で承継を行い“一般措置”を適用
④ “相続”で承継を行い“特例措置”を適用

それぞれ、贈与で承継をおこなった場合は贈与税が納税猶予され、
相続で承継を行った場合は相続税が納税猶予されることとなります。

なお、贈与税の納税猶予を受けた後に、先代経営者(贈与者)が
死亡した場合には、猶予税額を受けていた贈与税が免除されると同時に、
同額の相続税が課税されることとなりますが(税目の切り替わり)、
所定の手続きを行うことにより引き続き相続税についても
納税猶予を受けることができます。

事業承継税制の適用要件はかなり細かく設定されており、
後継者育成など、税制以外の要素も考慮すると、
事前に綿密な承継計画を策定し、その計画基づいて承継を進めることが多く、
実務的には「②“贈与”で承継を行い“特例措置”を適用」
するケースが大部分を占めると思われます。


1-3.事業承継税制(特例措置)のメリット・デメリット
事業承継税制(特例措置)の主なメリット・デメリットは下記の通りです。

〔メリット〕
・ 一定の要件を充足する場合には全株式を税負担なく承継することが可能なこと。
・ 代表者以外の者からも全株式を税負担なく承継することが可能なこと。
・ 事業の継続が困難になり、合併等により納税猶予が取消になった場合には
減免措置があること。

〔デメリット〕
・ 納税猶予を継続するための要件を満たせなくなった場合には、
猶予された税額と利子税の納付が必要なこと。
・ 3代目後継者へ贈与で承継を行う際、事業承継税制の納税猶予を選択
しなければ当初猶予された税額が免除されないこと。
・ 改正により対象が広がり要件が緩和されたが、
税金対策で主流な資産管理会社等は対象とならない(※)など、
依然として適用要件が厳しいこと。
・ 手間・コスト・リスク・留意点が多く手続きが煩雑であること
(※)事業実態がある場合を除く。
その他、下記の会社は適用できないこととされています。
 従業員数が0名の会社
 上場会社
 風俗営業会社

次項からは、一番適用が多いと想定される
「贈与で承継を行い、特例措置を適用するケース」の適用方法を見ていきます。

2.贈与承継における事業承継税制(特例措置)の適用方法
2-1.大まかな適用手順
主な手続きの流れは下記の通りとなります。
ステップ①:事業承継計画の作成・認定
ステップ②:代表権の異動、自社株式の贈与
ステップ③:都道府県知事の認定
ステップ④:担保の提供と贈与税の申告
ステップ⑤:継続届出書・年次報告書の提出

2-2.各手続きの詳細

<ステップ①>
事業承継時までの経営の見通し等を記載した
「事業承継計画】を作成し、認定経営革新等支援機関
の所見を記載の上、令和6年3月31日まで
(令和6年度税制改正で「令和8年3月31日まで」に延長予定)
に都道府県知事に提出・確認をうける必要があります。

<ステップ②>
先代経営者は代表権を有さない様に、
後継者は代表権を有する様に、代表権の異動を行います。
その後、先代経営者等から全部又は一定数以上の非上場株式等の
贈与を行います。
この時、先に代表権の異動を行うことが制度の適用要件であり、
手続きの順序に注意が必要となります。

<ステップ③>
会社の要件、後継者の要件、先代経営者の要件を
満たしていることについて、所定の書類を作成・申請し、
都道府県知事の認定(認定まで2~3ヶ月程度)を受けます。
当該申請書類は必要とされる添付書類のボリュームが多く、
また、書類の収集に時間を要するため、
ステップ②の実行と並行して準備を進めておくとスムーズです。

<ステップ④>
贈与税の申告期限までに、この制度の適用を受ける旨を
記載した贈与税の申告書等を税務署へ提出するとともに、
納税が猶予される贈与税額等に見合う担保(※)を提供します。
※ 一般的には事業承継税制対象の株式を担保に入れます。

<ステップ⑤>
納税猶予期間中は、承継者が贈与を受けた株式を保有しつつ、
毎年(一定期間後は3年ごと)下記の書類を提出することで
納税猶予が継続されます。
・ 継続届出書(所轄税務署へ提出)
・ 年次報告書(都道府県知事へ提出)

株式を譲渡したり、上記書類の提出を怠った場合には、
納税猶予が取り消され、猶予されていた贈与税と
猶予されていた期間に係る利子税を納付する必要があります。

3.制度活用にあたっての主な留意点
・ 財産価値が株式に集中している場合には、後継者以外の
相続人には公平な財産承継ができず、後継者以外の相続人から
遺留分減殺請求を受ける可能性があること(遺産分割に課題がある場合は留意)。
・ 相続税の申告上、納税猶予を受けた株式も相続税率の判定基準である
相続財産に含まれるため、株価が高額であれば、
後継者以外の相続人の相続税負担が増加すること。
・ 猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があること。
・ 納税猶予が免除されるまでは、一定の要件を維持していることを
報告するために、所轄税務署と都道府県知事に所定の報告書面を
提出し続ける必要があり、事務手続負担が生じること。

4.終わりに
法人版事業承継税制について、一連の流れをご説明しました。
この制度は、事業承継の際の贈与税・相続税の金銭的な
負担を軽減できる一方、手続きが煩雑であったり、
要件が厳しかったりと事前に入念な検討が必要です。

事業承継は、税負担が重くなり承継自体が難しいケースも多いです。
事業が好調な企業ほど、メリットが大きくなる制度ですので
一度検討いただければと思います。

5.参考資料(適用要件について)
会社、後継者、先代経営者などに、
それぞれ適用のための要件が設定されています。
下記の国税庁公表資料において適用要件がまとめられていますので、
適用をご検討されている方はご確認ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_01.pdf

文責:わかば経営会計 永山昌樹(東京事務所)、萩原和紀(東京事務所)
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