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わかば経営会計メールマガジンVol68  令和6年度税制改正大綱

2024.01.29Vol.068

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わかば経営会計メールマガジン Vol 68   令和6年度税制改正大綱
2024年1月29日 月曜日
【目次】税制・経営コラム ~令和6年度税制改正大綱(主要論点)~
1. 令和6年度の改正内容概要
2. 賃上げ促進税制の見直し
3. 交際費等の損金算入制度の延長・拡充
4. 外形標準課税対象会社の見直し
5. 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

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◇ 令和6年度税制改正大綱 ◇
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
1月に入り、東京でも雪が観測されるほど寒い日々が続いています。
皆様も十分に体調にはお気をつけてお過ごしください。

さて、表題の通り今回も税務のお話となります。
昨年10月にインボイス制度、
今年1月より電帳簿保存(電子取引データ)の強制適用と、
税務に関わるイベントが続いていますが、
今回は昨年12月に発表された「令和6年度税制改正大綱」について、
主要な改正、特に法人運営に関する論点にフォーカスして
改正内容を説明していきたいと思います。
ぜひご一読ください。

1.令和6年度の改正大綱の概要
今回の改正は例年と比べるとそこまで改正点が多くない印象ですが、
様々な会社・個人に影響を与えるような抜本的改正が
何点か含まれていることが特徴でした。
事業を営むうえで必ず関わることになる「交際費」の定義の改正や、
今回のメルマガでは取り扱いませんが、多くの方に関係する
所得税・住民税の定額減税措置の導入などがその例となります。

次項からは、その中でも特に法人運営に関わる改正点をメインに
具体的な改正内容を見ていきたいと思います。


2.賃上げ促進税制の見直し
2-1.改正背景・趣旨
近年の物価上昇によって増加した国民の負担を緩和させ、
持続的な賃上げが行われる経済を実現させるという目的のもと、
前年と比較して一定の賃上げを行った企業に対し法人税額の控除を行う制度
(以下、「賃上げ税制」という)の見直しが行われました。

2-2.改正内容
主な改正内容としては大きく次の4つが挙げられます。
※下記以外にも細かな改正が行われているため、適用にあたっては事前に弊社までご相談ください。

① 適用期限の延長
従来、賃上げ税制の適用期限は「令和6年3月31日までに開始する事業年度」
とされていましたが、適用期間が3年間延長され、
「令和9年3月31日までに開始する事業年度」が適用対象となりました。

② 適用区分の改定
賃上げ税制は適用しようとする会社の規模に応じて要件等が定められており、
従来は「大企業」と「中小企業」の2つに分類されていました。
今回の改正では新たに「中堅企業」という区分を設け、
会社を3つに分類したうえで制度の適用検討を行うことが必要になりました。
なお、賃上げ税制における各区分の定義は下記のとおりです。
【中小企業】
・資本金又は出資金の額が1億円以下の法人(ただし一定の法人を除く)
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
・協同組合等
【中堅企業(新設)】
中小企業以外の法人で従業員が2,000人以下のもの。
ただし、一定のグループ会社を含めた合計従業員数が10,000人を超えるものを除く。
【大企業】
中小企業、中堅企業以外のもの等

③ 控除率の見直し
控除率については会社区分ごとに下記の見直しが行われました。
【中小企業】
変更なし
【中堅企業(新設)】
10~25%(上乗せ措置を含めると最大35%)
【大企業】
従   来:15~25%(上乗せ措置を含めると最大30%)
見直し後:10~25%(上乗せ措置を含めると最大35%)
※適用要件の判定状況によって控除率が変動します。

④ 控除率上乗せ措置の新設
「子育てサポート企業」又は「女性の活躍促進支援企業」として
厚生労働大臣から一定の認定を受けている場合に
控除率が上乗せされる制度が新設されました。
【全会社区分で同様】
「プラチナくるみん」、「プラチナえるぼし」等の認定を受けている場合:控除率+5%

2-3.適用時期
令和6年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることが見込まれています。

2-4.実務上の留意点
<グループ全体の従業員数の把握>
新たに新設された会社区分「中堅企業」は、その判定に自社情報だけでなく、
グループ会社の従業員数も把握する必要があります。
制度の適用誤りを防ぐためにも、グループ会社の情報を適切に取得できる環境を
整備しておく必要があります。
<新設された上乗せ措置の事前検討>
「プラチナくるみん」、「プラチナえるぼし」等による控除率上乗せについては、
賃上げ税制の適用を受けようとする事業年度中に認定を受けている必要があります。
決算日以後に認定を受けても上乗せ措置の適用を受けることができない事が
想定されるため、余裕をもって認定申請を行っておく必要があります。


3.交際費等の損金算入制度の延長・拡充
3-1. 改正背景・趣旨
中小企業の経済活動の活性化や、物価上昇による飲食費の高騰に対応するため、
企業が支出する交際費等の範囲から除外され非課税にできる
上限額を引き上げる改正案が提出されました。

3-2. 改正内容
交際費等から除かれる飲食費等の金額基準が1人当たり5,000円以下から
10,000円以下に拡充されます。
上記のほか、改正内容としては交際費等の損金不算入制度が
3年間延長※されます。
これに伴い、接待飲食費の50%損金算入される特例、
中小企業の定額控除限度額(年800万円)の特例も
3年間延長※となります。
※2024年3月31日までに開始する事業年度までが適用期限でしたが、
2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長されます。

3-3. 適用時期
飲食費等の金額基準が10,000円以下となるのは、
2024年4月1日以後に支出する飲食費等からです。

3-4. 実務上の留意点
<経理規定等の社内整備>
金額基準の拡充に伴い経費精算の基準、社内規定等の見直しが必要となり、
経理部以外の従業員への説明・周知も行う必要があります。
<同年度における複数の基準の混在>
2024年4月1日以後に支出する飲食費等から適用となるため、
5,000円以下の期間、10,000円以下の期間が混在する事業年度は、
取り扱いに注意する必要があります。


4.外形標準課税対象会社の見直し
4-1.改正背景・趣旨
外形標準課税とは、法人に対して課される事業税の計算手法の一つであり、
企業間の税負担の公平性を図るため、一定の法人においては
他と異なる方法で事業税を計算するという制度となります。
これまで、小規模な企業の経営・事務負担に与える影響を考慮して、
適用対象は「資本金1億円超の法人」に限定されていましたが、
大手企業が意図的に資本金を1億円以下に減資することで
課税対象から逃れる節税施策が問題視されていました。
そこで、今回の税制改正により現行基準(資本金1億円超)に加えて、
追加基準が設けられました。

4-2.改正内容
今回設けられた追加基準は以下のとおりです。
① 前事業年度に外形標準課税対象であった法人につき、
減資等により当該事業年度の資本金が1億円以下の場合、
資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるときは、
前年同様、外形標準課税の対象とすることとなりました。
② 施行日(令和7年4月1日)以後最初に開始する事業年度について、
①にかかわらず、下記のいずれにも該当する法人は
外形標準課税の対象とすることとなりました。
 公布日を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が
1億円以下の場合は、公布日以後最初に終了する事業年度)に
外形標準課税対象であること
 当該施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下で、
かつ、資本金及び資本剰余金の合計額が10億円を超えるもの
【例】
公布日を令和6年3月31日と仮定すると、
令和5年3月期において外形標準課税対象法人であった3月決算会社は、
令和6年3月30日までに資本金が1億円以下となっていない場合には、
令和6年3月31日以降、資本金を1億円以下に減資したとしても、
資本金及び資本剰余金の合計額が10億円を超える時は、
外形標準課税の対象となります。

③ 資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人
(非課税又は所得割のみで課税される法人等を除く)又は
相互会社等の100%子法人等のうち、下記のいずれにも該当する法人は
外形標準課税の対象とすることとなりました。
 事業年度末の資本金が1億円以下
 資本金と資本剰余金の合計額が2億円超
なお、公布日以後に、100%子法人等がその100%親法人等に対して
資本剰余金から配当を行った場合、当該配当額は上記の2億円超の判定に含まれます。

4-3.適用時期
令和7年4月1日以後最初に開始する事業年度から適用されることが見込まれています。

4-4.実務上の留意点
<減資手続きの必要性>
減資を行うためには、株主総会の決議や債権者保護手続き等が必要となり、
手続き完了までに最低でも1ヶ月以上の期間を要します。
また、官報公告の費用や登記関連費用等の費用負担も生じる点に注意が必要です。


5.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
5-1. 改正背景・趣旨
「中小企業事業再編投資損失準備金制度」とは、
M&Aによって他社の株式を取得した際の財務負担を軽減するため、
株式取得費用の一部(最大7割)を経費算入することで、
M&A後の税負担を一時的に軽減させる税制として、
令和3年度の税制改正で創設されました。
今回、成長意欲のある中堅・中小企業の成長をさらに後押しし、
国内の生産力強化を図るため、現行制度の一部拡充措置が講じられました。

5-2. 改正内容
新制度は、産業競争力強化法の改正法の
特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた事業者が、その計画にしたがって、
株式等を取得しその取得日の属する事業年度の終了の日まで保有している場合に
株式等の価格の下落による損失に備えるため、損失準備金を積み立てた場合、
その損失準備金のうち株式等の取得価額に次の①、②割合を乗じた金額までを
損金算入できる制度となります。
また、積み立てた損失準備金は、一定の場合を除き、
積立事業年度終了日の翌日から10年を経過した事業年度から
5年間据え置いた後に均等に取り崩し益金算入されます。
① 最初に取得した株式等:90%
② ①以外の株式等:100%

現行制度との異なる点としては下記の通りです。
【損金算入割合】
現行制度:株式等の取得価額の70%以下
新制度:株式等の取得価額の90%以下、100%(詳細は前述①、②参照)
【益金算入時期】
現行制度:据置期間5年
新 制 度:据置期間10年
【適用除外となる株式等の範囲】
現行制度:取得価額10億円超
新 制 度:取得価額100億円超、取得価額1億円未満

5-3. 適用時期
現行制度:2027年3月31日まで(今回の改正で適用期間が3年延長)
新 制 度:改正が予定される産業競争力強化法の施行日から2027年3月31日まで

5-4. 実務上の留意点
新制度は、産業競争力強化法の改正を前提に設置されるため、
今後公表される適用要件・特別事業再編計画(仮称)が
どのような内容になるかキャッチアップが必要です。
また、本制度はあくまで課税の繰り延べである点は
新制度・現行制度ともに変わらないため適用の際は留意が必要です。



文責:わかば経営会計 山本悠貴(大阪事務所)、萩原和紀(東京事務所)、永山昌樹(東京事務所)
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