企業再生

DDとは?

再生局面におけるDDの種類やその内容について解説します。

2024.12.17

DDの意味およびDDの種類

DDとは「デューデリジェンス」の略称であり、直訳はDue(当然支払われるべき)、Diligence(勤勉、努力)です。直訳すると何だかよく分からないのでもう少しかみ砕くと、下記のように定義づけられます。

 

対象企業の経営環境、事業内容などを調査し、法務面・税務面等の特定分野における問題点・リスクや、財務状況・収益力について企業分析を行うことで、正確な企業経営の実態や事業運営の手法を把握するための精密な調査のこと

 

その種類は目的に応じて多岐にわたります。

1.財務DD
2.事業DD
3.税務DD
4.法務DD
5.労務DD など

 

 

 

再生局面におけるDDの主な目的

DDの種類は色々ありますが、事業再生の局面において実施されることが多いのは、「財務DD」と「事業DD」です。

 

 

■ 財務DDおよび事業DDの概要

 

■ 財務DD

財務DDとは、財務面から見た当社の実態を把握するための調査です。

実務上は、再生計画を策定する前段階として、まずはDDを実施して会社の実態を把握することが多いですが、財務DDの調査結果は、計画策定のための数字面での根拠情報となります。

特に中小企業の場合、いわゆる粉飾決算や会計処理の誤り等によって、決算書の数字が実態と乖離しているケースがありますので、財務DDの調査を通して、「実態」の財務状況を明らかにする必要があるのです。

ここで把握した実態ベースでの財務状況によっては、金融機関に依頼する金融支援の内容が変わってきます。

例えば、収益改善によって債務超過の解消が見込まれるケースであれば、金融機関から借入金の返済猶予(リスケジュール)を受けることで再生を図っていけるかもしれません。一方で、債務超過の金額が大きく、借入金の返済を遅らせるだけでは債務超過の解消が難しい場合には、債権カット等の抜本的な支援が必要になる可能性があります。こうした再生計画の絵姿を考えるためには、財務DDを適切に実施することがとても重要です。

 

■ 事業DD

事業DDとは、会社を取り巻く環境(外部環境)、経営資源(内部環境)、過去の損益の分析や会社へのヒアリング等によって、会社が窮境に陥った要因や事業の強み・弱みなどを整理し、現状の課題とその解決策を導き出すための調査です。事業DDによって判明した課題とそれを解決するための方向性が、DDを実施した後に策定する再生計画につながっていきます。 再生局面にある企業には、必ず業績が不調になった要因があり、その内容はコロナの流行や円安など会社を取り巻く外部環境に起因するものもあれば、人材不足や原価管理体制の欠如など会社自体に原因があるものもあり、多岐に渡ります。
こうした会社ごとの窮境要因を特定し、SWOT分析等を通じて把握した会社の特性に即した解決策を提示することが事業DDの主な目的であり、その後の事業再生計画数値やアクションプランの策定における基礎となります。

 

 

 

財務DDの主な項目

中小企業の事業再生においては、中小企業活性化協議会を活用した私的整理手続が多く活用されているところですので(『中小企業再生の手続選択』参照)、一例として、中小企業活性化協議会で実施される財務DDの主な項目をご紹介します。

中小企業活性化協議会の財務DDにおいては、いわゆる「7つの指標」を分析・検討します。なおこの「7つの指標」の詳細な説明は、別の機会にさせていただきます。

 

 

■ 財務DDにおける「7つの指標」

1.実質債務超過
2.収益力
3.フリーキャッシュフロー
4.過剰債務
5.債務償還年数
6.非保全額
7.税務上の繰越欠損金

 

 

 

事業DDの主な項目

事業DDにおいては、一般的には下記のような項目を分析・検討することが多いです。しかし、ある程度必要な分析項目が決まっている財務DDと違い、事業DDは調査対象企業の業種や事業内容、抱えている問題などによって、深く調査するべき内容は会社ごとに異なります。下記の例示項目のうち、特に事業分析は、対象会社ごとに内容が大きく変わることに留意が必要です。

 

 

■ 事業DDで調査する主な項目例

1.会社概要(事業内容、株主構成、役員構成、沿革など)
2.ビジネスモデル俯瞰図(得意先・仕入先等を含めた事業の流れをまとめた図)
3.外部環境分析(会社を取り巻く環境を分析することで、外部環境に起因した窮境要因を把握する)
4.事業分析(利益の源泉はどこにあるのか、窮境に陥っている要因は何なのかを探っていく。たとえば製造業であれば、原価計算の実施や商品別の採算分析などを行うケースが多い)
5.SWOT分析(会社の強み・弱み・機会・脅威)
6.窮境要因とそれを踏まえた今後の方向性(事業計画のアクションプランにつながる情報になる)

 

 

 

今回は、事業再生実務において実施されることが多い「財務DD」と「事業DD」について解説しました。

最終章に記載したDDの各項目のうちどこに重点を置くかは、案件の内容や論点によって異なります。粉飾が行われているのか、資金繰りに窮しているのか、本業の市場規模が縮小しているのかなど、会社が抱えている課題はそれぞれですので、会社へのヒアリングや資料・データの分析を通じて、個別具体的な課題・論点を発見することが、DDを行ううえで実務上最も重要です。

公認会計士(東京事務所所属)

山﨑浩史

https://wakaba-ac.jp/member/713/

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