事業承継

事業承継の概要

事業承継の概要について解説します。

2025.03.06

弊社では、お客様の状況に合わせて承継方法の策定や、承継資金の検討、後継者の育成などの支援をしています。中小企業の事業承継の現場でも、M&Aによる第三者の承継が増えていますが、多くは現経営者の親族又は経営幹部へ承継することから、ここでは主に親族内承継を前提に記載しています。

この記事を執筆時点で筆者自身も父の税理士事務所の事業承継を進行中であります。事業承継の基本的な概念とその重要性について、後継者である筆者の主観も交えながら解説します。

 

 

 

事業承継とは

事業承継とは、企業の経営権や資産を現経営者から次の世代や第三者に引き継ぐプロセスを指します。これは単なる経営者交代ではなく、企業の文化や価値観、ビジネスモデルを含む全体的な承継を意味します。

 

・株式:企業の株式の承継

・経営権:現経営者から後継者への経営権の承継

・文化:企業の理念や価値観、文化の承継

 

 

 

一般的なステップ(Step1~Step3)

事業承継のプロセスは複数のステップから構成されます。後継者の置かれている状況や会社の業績によって、ステップが前後することもありますが、一般的には以下のステップに大別されます。

Step1:承継計画の立案

さまざまな承継方法がありますが、それぞれの方法でメリット・デメリットが異なります。承継する時期、会社の業績によって、最適な承継方法が異なるため、承継計画の立案が必要となります。

 

(承継計画を立案する際の主な考慮事項)

・現経営者のおおよその退任時期

・会社の株価(会社の業績)

・後継者の状況(すでに経営に関与しているか、親族か、資力の程度など)

・承継する株式やその他財産の範囲

・後継者以外の親族の関与度

 

特に、株式の承継にはお金が必要な一方で、後継者に十分な資力がない場合が多く、Step3を実行するための方法の選択や、そこに至る準備が必要となる場合があります。

そのほか、具体的な後継者が決まっていない場合には、後継候補となる経営幹部の育成を含めて計画の立案が必要となる場合もあります。

 

 

Step2:後継者の育成、周りを固める幹部の育成(実質的な経営権・文化の承継)

多くの浮き沈みを経験した現経営者から見れば、後継者がすでに十分な知識・経験・スキルを備えていることは少ないでしょう。Off-JTによる研修だけでなく、現経営者のそばで取引先との交渉や、営業・製造現場の管理を通じた経営の判断過程、企業理念や歴史、文化を生で体感する時間が必要となります。また、決算や資金繰りなど会社の財務面について学ぶことや、銀行への対応ができるようになることも必要です。

 

弊社では、3年~5年の中期計画を後継者と経営幹部で策定する過程を通じて、後継者に事業の外部・内部環境の理解、経営課題の把握を促す支援をしています。

 

例えば、ある経営課題に対して、後継者にその改善のためのアクションプランを検討いただきます。その検討過程で会社の置かれている状況や自社の強み・弱み、リソースなどを理解する必要があります。そのうえ、そのアクションプランの実績は計画策定時の見込みと乖離することが多いため、自らの見込みの甘さを体感し、アクションプランの修正過程を通じて自社への理解が進むとともに、視座が高まり、従業員や金融機関とのコミュニケーションの大切さ等を感じるきっかけとすることができます。

 

 

Step3:株式の承継による法的手続と税務対策(法的な経営権・株式の承継)

承継に伴う法的手続や税務対策も重要です。遺産分割や贈与税、相続税などの税務問題を適切に処理し、法的な手続を確実に行うことが求められます。

 

・自社の株価算定

・事業承継税制の検討(メリット・デメリットの理解)

・相続した場合、贈与した場合

 

 

Step0:現経営者と後継者の意思疎通

一方で、承継がなかなか進まない背景には下記のような現経営者と後継候補の心理的背景とすれ違いがあるのではないかと推察されます。

 

(現経営者の気持ち)

・経営は不安で困難なことも多く後継者に無理強いをしたくない、だからこそ後継者の承継する覚悟や意思を感じたい、その意思があるのなら後継者から行動を起こすべきだ。

・後継者の視座が低く、会社の現状を正しく理解できていない。

・後継者は会社・雇用・協力会社を守る責任や、経営者としての矜持や理念、大切にすべきことがわかっておらず、承継するにはまだまだ不安が残る。

 

(後継者の気持ち)

・現経営者に退任の意思があるのかわからない。

・経営層が見ている会社の現状がわからないので、軽々しく承継の意思を示せない。会社・雇用・協力会社を守る責任を感じるものの、わからないことが多すぎて大きな不安がある。

・漠然と知識・経験・スキルの不足を感じるものの、具体的にどのように行動すれば、その不足が埋められるかがわからない。

 

 

 

長年にわたり試行錯誤を重ね、企業の成長を支えてきた現経営者。その視座に後継者世代がたどり着くには、多くの経験と時間を要します。この目線の違いが、意思疎通の難しさを生むことも少なくありません。

弊社では、家族会議の開催、事業課題の分析、計画策定の支援を通じて、現経営者と後継者の対話を促し、双方の理解を深めるお手伝いをいたします。事業の方向性を共有しながら、円滑な承継を実現するためのサポートを提供いたします。

公認会計士(沖縄事務所所属)

眞喜屋利一

https://wakaba-ac.jp/member/505/

ほかのカテゴリをみる

記事一覧へ